ヘヴィ・メタルの歴史

このページはヘヴィ・メタルの歴史について簡単にまとめたものです。

1960年代(ハード・ロック創生期)

ハード・ロックの起源には諸説紛々ある。実際、その言葉が登場したのが いつなのかははっきりしない。THE BEATLESが起源だとかCREAMが起源だとか 色々な説はあるが、このあたりは個人のセンスの問題であり、はっきりと これとはいえないだろう。THE WHOCREAMJIMI HENDLRIXSTEPPEN WOLF等のブルーズ・ロックやジャズ・ロックに影響を受け、実際に はっきりとした形で、ハード・ロックという認識が出てきたのは1960年代末期のDEEP PURPLELED ZEPPELINがデビューしてからと言える。更に1970年にはBLACK SABBATHが デビューし、特にこの3バンドは後々にハード・ロック/ヘヴィ・メタルという ジャンルに対して大きな影響を与えることになるエポック・メイングといえる バンドである。共にロック・シーンでは成功を収めたバンドであるが、特に LED ZEPPELINTHE BEATLESROLING STONESにも劣らない成功を収め、今なお ハード・ロックだけに留まらず幅広い人気を持っている。

1970年代前半(ハード・ロック勃興期)

上述のDEEP PURPLEBLACK SABBATHLED ZEPPELIN等の絶頂期と言える時期で、 シーンもこれらのバンドを中心に動いていた。その他にもURIAH HEEPが デビューし、これらに続くバンドとしてGRAND FUNK RAILROADKISSAEROSMITHNAZARETH等が登場し、その火の手はイギリスからアメリカへと飛び火していく。 またカナダのRUSH、ドイツのSCORPIONS、オーストラリアのAC/DC等、世界各地から 様々なバンドが登場してきた。ヘヴィ・メタルという言葉もこのころ ジャンルとしてではないが登場している。BLUE OYSTER CULTがヘヴィ・メタルと 言われだした最初のバンドだが、それはその歌詞に対してであり、実際の 音楽性とは関係のないものだった。またHEAVY METAL KIDS なるバンドも登場しているが、現在のヘヴィ・メタルと呼ばれる音楽に関連性はない。

1970年代後期(ハード・ロック黄金期)

1978年に全盛を迎えるパンク・ブームが1976年に起こる中、1973年〜1976年 辺りにかけてハード・ロックの人気は陰りを見せる。DEEP PURPLEMOUNTAINMONTROSEと言ったバンドは解散へ、BLACK SABBATHはかつてのパワーを失い OZZY OSBOURNEの脱退へと向かって行った。しかし、1976年以降になるとKISSAEROSMITHUFOTHIN LIZZYといったバンドが新たに人気を得て行き、活況を 見せていく。とはいうもののこれらのバンドも1980年代に入ると力を失い、新たに登場してきた有望新人は VAN HALEN位であった。この状況は1970年代末のN.W.O.B.H.M.の勃発まで続き、大きな世代交代期を 迎える事になる。その他DEEP PURPLEを脱退したRICHIE BLACKMORE率いるRAINBOWが 日本等で人気を得ている。

1979年(N.W.O.B.H.M.の登場)

1970年代末になるとイギリスで新しい動きが起こり、1979年にそれは一挙に 噴出する。IRON MAIDENSAXONといったバンドが登場し、数多くの若いバンドが 活発に活動し始める。後にイギリスの代表的なヘヴィ・メタル専門誌KERRANGの 編集長となる当時SOUNDS誌の記者だったにGEOFF BARTONにより、この ムーヴメントはNew Wave Of British Heavy Metalと名づけられた。この言葉より ジャンルとしてのヘヴィ・メタルという言葉が確立される。このムーヴメントは ヘヴィ・メタル・パブ&ディスコのバンド・ワゴンでDJをしていた NEIL KAY等によって広められ確固とした人気を博していく。だが一方で、 これらのバンドへのレコード会社の態度は冷淡で、大手ではEMIといった特定の レコード会社のみがレコードをリリースするだけで、ほとんどのバンドがNEATや HEAVY METAL RECORDSといったインディーズか自費製作でレコードを出さざるを 得なかった。こういったレコーディングに費用をかけれない様な環境の悪さも あいまって、多くのレコードは非常に音質が悪く、広く成功を収める至る バンドはほとんど出すことが出来ず、このムーヴメントも下火になっていき、 IRON MAIDENDEF LEPPARDが成功を収めるに留まった。この後イギリスの ヘヴィ・メタル・シーンは現在に至るまで、メジャー・シーンからはかけ離れた 存在となっている。

1980年代前半(ヘヴィ・メタル隆盛期)

N.W.O.B.H.M.のバンドが苦しい活動を行う中で、レコーディングなどより環境の 良い活動を行えたベテラン、中堅と言えるアーティスト達の活躍で、 ヘヴィ・メタル・シーンは大きな盛り上がりを見せていく。SCORPIONSAC/DC等のアメリカでの成功に続き、OZZY OSBOURNEJUDAS PRIESTDEF LEPPARDと言ったアーティスト等もヒットを飛ばし、ヘヴィ・メタルの 隆盛へと向かっていった。またN.W.O.B.H.M.の火の手はアメリカ西海岸に 飛び火し、多くのバンドを生み出していくことになる。

1980年代中頃(L.A.メタルの登場)

1980年代初頭、VAN HALENを除けばY&T位が地味に活躍する程度だった、アメリカの バンド達であったが、N.W.O.B.H.M.の登場はアメリカのヘヴィ・メタル・シーン にも活気を与え、次々と新しいバンドが登場する。特にこの動きはL.A.で活発で、 アメリカのレコード会社もL.A.に注目を置き、またそういう状況で多くのバンドが L.A.に流れ込んできた。QUIET RIOTや1980年代初頭に登場したMOTLEY CRUEの 商業的成功に始まり、L.A.を中心に西海岸よりRATTDOKKENGREAT WHITEQUEENSRYCHEと 言ったバンドが成功を収めていった。また西海岸以外からも、NIGHT RANGERBON JOVITWISTED SISTERWHITE LION等が活躍する事になる。これらのバンドが 次々とヒットしていった背景にはMTVによるビデオ・クリップという新たな媒体を 元にしたプロモーションが可能になった事が大きく寄与している。

1980年代中頃以降(シーンの細分化)

一方で、より特徴を先鋭化させたバンド等によって、シーンは細分化していく。 ハード・コアへ歩み寄りMETALLICAEXCITER等のリフを重視した スラッシュ・メタルが誕生し、ANTHRAXSLAYERMEGADETHEXODUSTESTAMENTと言ったバンドが次々に登場した。他方で、クリスチャンとしての イメージとスタイルを強調したSTRYPERの登場で、クリスチャン・メタルという ジャンルが登場するが、これらのバンドはあまり音楽的に関連性はなく、STRYPERを 除けばあまり大きく盛り上がる事はなかった。また、ドイツではHELLOWEENの登場により、 その大仰なメロディのパワー・メタルはドイツのバンドに広く影響を与え、 ジャーマン・パワー・メタルという言葉が登場する。またEUROPEの成功により N.W.O.B.H.M.の影響を受けた、哀愁を帯びた叙情的なメロディを特徴とする 北欧メタルも注目を集め出すようになる。

1980年代後半(ヘヴィ・メタル爛熟期)

ヘヴィ・メタルの長い隆盛の末、このころになるとL.A.メタルの隆盛も一段落し、 有力なバンドもほとんど出尽くした状態になってくる。QUEENSRYCHEGREAT WHITEMOTLEY CRUEBON JOVIと言った新進バンドや、WHITESNAKEOZZY OSBOURNEと いったベテラン達は引き続き活躍していたが、1980年代末になると全体的に ヘヴィ・メタルというものにシーンも飽き始め、新たな物を求めるように なってきていた。このころ新たに人気を博し始めたのがグラム・ロック系の バッド・ボーイズ・ハード・ロックンロールである。POISONのヒットを皮切りに、 GUNS 'N' ROSEFASTER PUSSY CATと言ったバンドがヒットを飛ばしていった。 また、METALLICAの成功を始め、スラッシュ系のコアなバンドが活躍するように なり、シーンは両極化していく。それ以外にも日本よりLOUDNESSがアメリカに進出し、スマッシュ・ヒットを 放っている。またヘヴィ・メタルへのバッシングという現象が現れ、AL GORE現アメリカ副大統領夫人 TIPPER GOREが主催する団体(PMRC)によるセンサーシップが世間の関心を呼んだ。

1990年代(ヘヴィ・メタル衰退期)

ヘヴィ・メタルの隆盛は終局を迎え長い冬の時代に入っていく。世の関心は ヘヴィ・メタルから離れ、グランジ等が人気を得ていった。METALLICABON JOVIといった生き残った大物バンドを除けば新たにヒットを飛ばした バンドはEXTREMEPANTERA他、ごく少数である。こういった情勢の中、 ヘヴィネスやシアトル系と言われる方向性を目指して、多くの ベテラン・ミュージシャンも転身する姿が見られたが、結局成功には いたっていない。また一方で新しい動きとしてDREAM THEATERを始めとする プログレッシヴ・メタルという新しいムーヴメントも現れて来たが、 DREAM THEATERを除けば成功に至ったとは言えない状況である。1980年代末に 登場してきたTESLAはアコースティック・ライヴ・アルバムをヒットさせ、 その後のアンプラグド・ライヴの流行に先鞭をつけている。

1990年代以降(エクストリーム系の登場)

これまでの正統的なヘヴィ・メタルも健在であったが、昔の様な人気は 失ってしまっている。1980年代中頃から始まったシーンの細分化はより 顕著になり、シーンはコアな方向へと向かって行く。グラインド・コアの影響を 受け、デス・ボイスと言われるだみ声を使い、ブラスト・ビートを使った ブルータルなサウンドを標榜するデス・メタルが登場する。さらにこの デス・メタルにメロディアスな音楽性を持ち込み、 メロディック・デス・メタルという新たなムーヴメントも登場する。その他にも N.W.O.B.H.M.のVENOMBATHORYと言ったバンドの影響を受けた、サタニック信仰を 身上とするブラック・メタル、BLACK SABBATHの様式美を突き詰めた ドゥーム・メタル、耽美な音楽性を追求したゴシック・メタル、 ブラック・メタル同様反キリストを標榜するが、北欧神話の神々を信仰する バイキング・メタル等、アンダーグラウンド・シーンの活動が盛んに なってきている。
文責 / かねこ(兄) / kaneko@metal.or.jp

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